超個人的漫画批評

Hello Manga Lovers all over the world, 漫画と共に歩んできた三十数年。 漫画喫茶に20代の全てを注ぎ込み、漫画こそが最高の娯楽だと信じてきた。 少年少女青年、昭和平成、時代もジャンルも問わずに読み続けてきた。 自身を形成しているのは漫画と言っても過言ではない。 そんな人生に少し後悔もあるが、、、此の先に在る奇跡を目指し、超個人的漫画批評、はじめよう、、 さぁ 、行こうか。

式の前日(81点)

式の前日(81点)

作者 穂積

月刊フラワーズ 全1巻

 

新進気鋭の漫画家、穂積先生のデビュ作にあたる短編集。以前から穂積先生の名前は見かけたが、これが私の読んだ彼の最初の作品になります。収録作品は6話なのだが、どれも素晴らしく、穂積先生独自のユニークな、あまり他の漫画家には無い視点から描かれた作品群だと感じた。これがデビュー作とは、、、とてもでは無いが信じられない。この手の作品は、他の漫画家たちが真似しようと思っても、容易に真似できるようなものではなく、間違いなく穂積先生の才能だと感じた。

 

全体的に、文字が無いコマの使い方、画での持っていきかたが独特で良い違和感を感じながらも、どこか心地良い雰囲気で進んでいく。

 

ここからはネタバレになります!この漫画の初読は、ネタバレを読んでしまってからだと良さが半減してしまいますので、未読の方は立ち去る事を強くお勧めします!

 

本タイトルにもなっている、1話目は「式の前日の夫婦の話なのかな?」と思ったら、、、

 

結婚前夜の兄妹の話だったり。

 

離婚した父と娘のストーリなのかなと思ったら、、、

 

一年に一度しか会えない切ない話だったり、読者の意表をついてきます。私くらい沢山の漫画を読んでいると、こういうサプライズの漫画は、どこか狙っている嫌らしい感じを受けてしまったり、ストーリーの序盤で「狙ってるな。」と勘付いてしまうのですが、そこはこの穂積先生の才能なのでしょうか。そのような「嫌らしさ」は微塵も感じさせません。むしろ、この心地よい雰囲気と切なさが共存する不思議な世界に、涙してしまう方も多いのではないかと思います。

 

同じ女の子に恋した双子の話、売れない漫画家とカラスの話など、どれも甲乙つけ難い素晴らしい作品になっています。どちらのエピソードも自分が予想していた方とは逆の裏切られる結末に、ニヤッとしてしまいます。短編のはずなのに穂積先生の大きなスケールすら感じます。

 

本短編集唯一の2話のエピソードは、妹の結婚式のために10年ぶりに兄が故郷に帰るストーリー。2話に増えた事によって、他の短編よりも世界観にに深く入り込む事が出来るのですが、、、たった2話ですよ!!2話!普通の中編、長編の漫画を穂積先生に描かせたら、一体どれだけ読者を食い付かせる事が出来るのだろう。恐ろしいです。他の新しい作品もすごく読んでみたくなりました。

 

そして最後の話も、1話目の後日談というのもなかなかニクい。

短編集なので、サラッと読もうと思っている方には、穂積先生の才能に読後の切なさが重すぎるかもしれませんが、ぜひオススメの一冊となっております。