超個人的漫画批評

Hello Manga Lovers all over the world, 漫画と共に歩んできた三十数年。 漫画喫茶に20代の全てを注ぎ込み、漫画こそが最高の娯楽だと信じてきた。 少年少女青年、昭和平成、時代もジャンルも問わずに読み続けてきた。 自身を形成しているのは漫画と言っても過言ではない。 そんな人生に少し後悔もあるが、、、此の先に在る奇跡を目指し、超個人的漫画批評、はじめよう、、 さぁ 、行こうか。

ユウタイノヴァ(76点)

ユウタイノヴァ(76点)

作者 押見修造

週刊ヤングマガジン 全2巻

 

「惡の華」や「漂流ネットカフェ」などで有名な押見修造先生の短編。前述の2作品よりは前に描かれたものだが、私は2作品よりも後に読ませて頂きました。押見先生の才能を存分に確認する事ができ、『あぁ、ここから「惡の華」や「漂流ネットカフェ」が生まれたのか。』と押見修造イズムをすでに感じる事ができた。有名な「クソ虫。」などのフレーズもすでに登場する。もちろん押見作品独特の作品全体を包む闇も存分に感じる事が出来る。

 

   タイトルにもある通り、幽体離脱を主としてストーリが展開するのだが、押見先生がよくあるただのオカルト漫画を書くはずがないのは、彼の作品を読んだ事がある方なら知っている事だろう。

 

ストーリーは、主人公の柏木晴が幽体離脱する所からはじまる。離脱後は、忘れられない元カノ・日比野由美の家に侵入というお決まりパターン。

 

女の子が可愛いというのは、漫画を読む上では俺氏にとってはかなり重要な要素なのですが、押見先生の描く女性陣は結構好みかも。この2人が別れた理由というのが、高校時代までさかのぼる。思春期ということもあり、何度も大人への階段を登ろうと挑戦するのだが、痛みのためうまくいかない。まあ、よくある話である。そこで、晴は結構ゲスい事を言っちゃう。

 

「こっちの身にもなってくれよ、、中略、、一回入ったら気持ちよくなんじゃ、、、」

 

なかなかのゲス野郎www 気持ちはわかるが、これは言っちゃダメだったね(笑)押見先生の伝家の宝刀・闇、早くも2話目から発生しました。結局これが原因で別れる事になるのだが、一読者の心境としては、由美ちゃん可哀想という気持ちに。こんなに可愛くてピュアなのに。ちょっとだけ由美ちゃんに恋してしまった。(こんな奴のことはキッパリ忘れよう。もっといい男なんてどこにでもいるから。)

 

しかし、そんな俺氏の気持ちをも簡単に裏切るのが押見先生である。ある日、由美は酔っ払ってイケメン男子と帰宅する。その後は、想像通りの展開である。それだけではない。あろう事か、このイケメン男子はとーっても悪い奴で、事後、由美ちゃんのあんな写真、こんな写真を撮って、仲間達と悪い事をしようと考える。この時俺氏は、本気で由美ちゃんの事を心配していた。(いらぬ心配とも知らずに)ハル、どうか由美ちゃんを救ってくれと、、、

 

イケメン男子は早速仲間たちと行動に移す。しかし、蓋を開けてみれば、由美ちゃんは彼らの何枚も上手で、高校卒業後の何年間かで、複数プレイも楽しむ完全なるビッチに成り下がっていたのだ。どうやったらこんなストーリーがかけるのか。押見先生、何か個人的なトラウマでもあるのだろうか、と勘ぐってしまう。でもこの感じが、とてつもなく押見ワールドなのである。まさに混沌である。

 

由美ちゃんに裏切られたインパクトが強すぎて、長々と語ってしまったが、物語の本質は、全く別の所にある。押見先生といえば、ミステリアスで魅力的な女性キャラクターであるが、この作品でもまさに押見修造イズムど真ん中のキャラクターが登場する。

 

まほろのヒロイン臭200%の風貌。物語の後半は、先生の他作品同様、押見ワールド全開の哲学的ノスタルジック哀愁カオスワールドに連れていかれる。ヒロインの彼女の正体に関しましては、ぜひ本編をご覧になって確認してみてください。

 

   巻末を読んでみると、どうやらこの漫画は打ち切りになったらしく、新装版の発売にあたって新たにエンディングを書き足したようです。もともとの完結編へと考えていたアイディアは、「漂流ネットカフェ」に受け継がれた様で、結構なサプライズでした。こんな面白いのに打ち切りになるんですね…押見先生は、この打ち切りを初めての挫折とおっしゃっていますが、この打ち切りがなかったら後の作品がなかったと考えると、なかなか感慨深いものがあります。